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Cute Movies

プレステージ

監督:クリストファー・ノーラン

(c)Touchstone Pictures. All rights reserved.
6月9日 スカラ座他 全国東宝洋画系にてロードショー!
(c)Touchstone Pictures. All rights reserved.
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19世紀末・ロンドン。
マジックが最先端のエンタテインメントであった時代。大仕掛けのマジックを一目見ようと集まる人々で街の大劇場は連日満員御礼だった。アンジャー(ヒュー・ジャックマン)とボーデン(クリスチャン・ベール)は性格こそ正反対だったが、同じ師匠のもと長年ステージ助手をつとめてきた若きマジシャンの卵。しかしある夜、いつもと何ら変わらぬはずの舞台で事件は起こった。その瞬間から、互いの人生とプライドを賭けた終わりなき戦いが幕を開ける…

【美しく頽廃的なロンドンの街と絶妙のキャスティング】
アカデミー賞の撮影賞と美術賞でノミネートを受けた本作は、19世紀末のロンドンを美しくかつ頽廃的に表現。マジックと聞くと、黒タキシードにトランプ、ハンカチからハトや造花といった人工的なイメージを思い浮かべるが、そんな予想に反してリアリティと美意識を見事に調和させた独特の世界観を体験させてくれる。

そして、メグ・ライアンと共演した「ニューヨークの恋人」でも際立つ紳士ぶりを発揮したヒュー・ジャックマンの優美な立ち居振る舞いや、「サイダーハウスルール」で胸が締め付けられるような余韻を残したマイケル・ケインの存在感、怪演と言ってもいいであろう「バットマン ビギンズ」のクリスチャン・ベールが見せる底知れぬ危うさ。それぞれの醸し出す味わいが相乗効果となり、上映開始早々、舞台の観客さながら大胆な魔術の世界に釘付けとなる。

【現代にも通じる隠されたテーマ】
これは当時のマジック事情もさることながら、演者であり仕掛けの開発者でもあったマジシャン達の光と影をえぐり出す物語。人をだますことで賞賛され、倫理観との板挟みに悩む日々。よりよい仕事をしたい、その一心で越えてしまう善と悪の境界線。多くのプレッシャーにさらされながら表と裏を使い分ける現代人にとっても身につまされるテーマが、実は随所に隠されている。ライバル心を顕わにし、激烈な応酬を繰り返すアンジャーとボーデンの闘いは、容赦なく熱い。ゆえに一種のさわやかささえも感じさせる。勝つか負けるか。現代社会に生きる私達にも無意識に課されている命題に、たとえ犠牲を払おうとも白黒付けてくれるこの作品は、その点においてカタルシスをもたらすことに成功していると言えるだろう。

幾多の観客を意のままに操ることのできる名マジシャンが人生に迷うのなら、自分自身さえうまくごまかせない私達はどうなるのだろう…サスペンスの名手クリストファー・ノーラン監督でさえもこの謎には答えを用意できなかったようだ。いや、もしかしたら、人生とはすなわちマジックそのものなのかもしれない。


text by...  こうだ真紀

2007/06/07